Blog
ブログ
根管治療の失敗2 歯根に穴(穿孔) 抜かずに治療できた
根管治療の失敗2 歯根に穴(穿孔) 抜かずに治療できた
最近では、ラバーダム・顕微鏡の使用と、
MTAセメントの出現で、下記の様な治療が多くなっています。
根管充填の除去
右側の根管から治療をしました。
すべてのケースは、次の項目を行います。
- 歯に付いた歯垢(菌の塊)を落とすため、パウダーを霧吹き状にして吹き付け、清掃します。
- 薬液漏れ防止のコーキング剤と、ラバーダムをします。
- 常時、顕微鏡で見ながら治療を行います。
チェックのため、たまに顕微鏡を使用するというのでは、顕微鏡の価値はありません。
根尖孔まで、除去
根管充填剤を、どんどん除去します。
汚物の除去
汚れた根管充填剤がでてきました。
菌まみれになっているようです。
まだ残っています
ちょっとした破片を見つけますと、そのままにしません。
必ず除去します。
根尖孔にひっかかり、出てきません
上から圧入されていて、根尖孔にはまり込んで、抜けません。
除去にかなり時間がかかります。
除去できました
血まみれになった、根管充填剤が除去できました。
本来は、根管充填剤なのですが、
一旦菌が侵入しますと、菌の温床になってしまいます。
こんな温床が根の先に残っているので、根の先(根尖部)の組織が化膿するわけです。
根管清掃
きれいに消毒できました。
MTA根管充填
根の先の穴(根尖孔)が、
イレギュラーな穴になっている場合は、
MTAセメントをよく用います。
抗菌性があり、根の先の治癒を促進する作用も持つ、すばらしい薬剤です。
これが発売されてから、飛躍的に根管治療し易くなりました。
MTAの問題
- 高価です。たった5gで3万円だったでしょうか。
- 操作が難しい。
- 万能薬ではない。
詳細な拡大清掃と消毒で、症状がおさまったが、
根尖孔の破壊や、側壁の穴などという問題が残っているという場合には、
うまくいくと思います。
根充後
緊密に充填されました。
残りの根も、根管治療します
下顎6番、下の歯の前から6番目の歯、手前側の根管です。
セメントが固まっていて、治療が困難です
セメントが硬く、除去に時間がかかります。
時間がかかってもいいから、ちょっとずつでいいから、完全に除去します。
汚れた根管充填剤がでてきました
根の先まで、もう一歩です。粘り強く、除去を続けます。
先にわずか残った根管充填剤を見つけました
ほとんどの根管充填剤が取れました。
わずかに残った根管充填剤(根充剤)を見つけました。
特別に細い針(探針=エキスプローラ―)で探ります。
洗浄も繰り返し行い、色んな手段で除去しようと試みます。
もう一歩で取れそうです
これも、根の先の穴(根尖孔)に引っ掛かって、なかなか取れませんが、頑張ります。
棒状の根充剤ですから、ひとかたまりで取出したいのです。
途中で切れてしまうと、先端は、根尖孔の外ですから、除去はほとんど不可能になってしまうからです。
根充剤が取れました
縦長の根尖孔が見えます。
これは通常の形ではありません。
人工的に孔が広げられたものです。
この様な根尖孔は、急に治癒しずらくなります。
未治療の根管にとりかかります
Kファイルで通り道をつけます。
ワイヤー状の器具です。
10分の1mm程度の細さで、根管に挿入していくのです。
ファイルとは「やすり」の事です。
ワイヤーそのものがらせん状になっていて、側面の尖りで根管の側壁を削り、根管を広げたり、汚物を削ったりします。
汚物が出てきました
根尖孔から外の組織へ、汚物を押し出さない様に気を付けて扱います。
「カギ」針状の細い器具で掻き出したり、洗浄したりして、除去します。
きれいに根管洗浄しました
きれいになったのが、肉眼的にも分かります。
適正濃度の、EDTAと、次亜塩素酸ナトリウムを用います。
EDTA は、石灰分の溶解剤です。
根管壁の削りかす(スメア層)が、根管側壁に付着というか、器具で押し付けられて擦り込んだ状態になっているのです。
この削りか す(スメア層)には、汚物中の菌が沢山おりますので、除去しなければなりません。
手用の器具ではもう無理で、薬剤で溶解するのです。
薬剤は温度を高めれば、反応性が高まりますので、温めます。
また、
撹拌しても、反応性が高まりますので、適切な超音波振動を与えます。
振動はスメア層の付着を除去する効果もあります。
次亜塩素酸ナトリウムは、強力な消毒剤であると同時に、タンパクを溶解しますから、汚物の除去と消毒がおこなえます。
消毒性と、タンパク溶解性、組織への為害作用を考慮し、色んな濃度が示されています。
根管洗浄、消毒は、根管治療のうちで、かなり重要な部分となっています。
MTA根管充填
消毒された根管を、MTAセメントで根充します。
MTAセメントの抗菌性と、治癒促進作用で、この歯は長く使えるようになると思います。
感染根管治療 再根管治療
感染根管治療、再根管治療とは
過去、神経を抜いた歯に、再び炎症が起こったため、必要となる根管治療の事です。
当院では、この治療をご希望の方がお越しになります。
神経を取る治療は、あまり行わなくなりました。
大きな虫歯でも、できるだけ神経を取らない様に治療するからです。
感染根管治療の場合は、他院で行われた抜髄治療、根管治療のやり直しとなるため、治癒困難な事が多くなります。
治療成功率も、1回目の根管治療としての抜髄より、低下します。
なぜかというと、色んな障害が起きているからです。
再根管治療時の障害
- 根管に人工的な凸凹ができ、Kファイルがそこに引っ掛かって、根尖にファイルが届かない。
- 根尖孔や根管側壁に穴が開き、修復が難しい。
- 以前、薬としてつめたはずのものに、菌が感染し、組織を刺激するような感染物となっている。
- 細い根管で使っていたKファイルなどが、折れて根管に食い込んで除去できない。
など、色んなケースがあります。
治りやすい歯、歯根
比較的再治療もしやすく、成功率が高いと思われる部位は、
- 根管が直線的な前歯、
- 小臼歯、
- 下顎大臼歯の遠心根、
- 上顎大臼歯の口蓋根
などです。
治りにくい歯、歯根
しかし、難易度が高く、治癒率が低下すると思われるのは、
- 根が曲がっているケース、
- 下顎大臼歯の近心根、
- 上顎大臼歯の頬側近心根
などです。
根尖性歯周炎とは
歯髄に感染した菌が、根尖孔から顎の骨の中に炎症が及んだものです。
根尖性歯周炎の主なタイプ
- 痛みがない事も多いです。(慢性根尖性歯周炎)
- 過去、神経を抜いた歯が、何年も経ってから痛くなる事もあります。(慢性根尖性歯周炎の急性化)
化膿が続く時は、歯茎にフィステルと言われる「できもの」ができ、そこから膿がジワジワと出てくる事もあります。
レントゲンでは、根の先に、黒い円形の影が映ります。
デンタルという、歯科医院でよく撮影するレントゲンの撮影方法では、顎骨内の化膿病変が黒く映らない事があります。
歯科用CTで撮影すると、よく分かりますので、根尖性歯周炎の発見には、CTが最適です。
この例の
年代・性別 40代女性
治療法 根管治療
デメリット 時間がかかる
治療時間 回数 2時間1回 × 必要回数分
費用 60,500 × 必要回数分
標準的な根管治療
うまく治療できた例
この記事を書いた人