Blog
ブログ

  • TOP
  • ブログ
  • 歯の神経を取らない治療(覆髄)

歯の神経を取る治療を回避できました。(ADゲル法)

歯の神経を取る治療を回避できました。(ADゲル法)

右上第2小臼歯の、詰め物(インレー)形成中、思わぬ露髄(歯の神経が露出してしまう事)をしましたが、歯の神経を取る治療を回避できました。(ADゲル法)


歯の神経を取る治療を回避できた (1)
コンポジットレジン(白い詰め物)をやり直す治療です。
ご覧の様に、歯と歯の間(隣接面)のレジン充填は、歯にピッタリ充填されていません。これでは、虫歯は止まりませんし、延々と虫歯に苦しめられることになります。
虫歯から脱出し、ご自分の人生を取り戻すために、治療をしています。
 

歯の神経を取る治療を回避できた (2)
詰め物(インレー)形成中、思わぬ露髄。点状の部分が見えます。歯の中心にある神経の一部が露出した所です。
隣の歯との間には、鉄板をはさんで、インレー形成中に隣の歯を傷つけない様にしています。
 

歯の神経を取る治療を回避できた (3)
レントゲン写真を見ても、歯の中心にある神経(歯髄)と、歯を削った穴(窩洞)との間には、象牙質の層がかなりあり、露髄の心配はないはずでした。
歯髄の一部が、イレギュラーな形で、飛び出していたのでしょう。
こんな時でも、痛くなく神経を取らない治療ができるのです。
 

歯の神経を取る治療を回避できた (4)
歯を削る道具(カーバイドバー)で、神経が露出した面(露髄面)を、大きく削除し、不潔部分を避けます。
 

歯の神経を取る治療を回避できた (5)
露出させた神経の面(露髄面)です。かなり大きく削り込んでも大丈夫です。

赤矢印の先が、神経が露出した面です。
削る事より、バイ菌に感染しない事の方が重要です。
ですから、この様な処置を、ラバーダムなしでやっては成功率がさがるでしょうし、より良い治療のためにはラバーダムを装着すべきでしょう。
 

歯の神経を取る治療を回避できた (6)
リン酸という中程度の強さの酸を、露髄面の付近一帯に塗ります。象牙質の表面をわずかに溶かし、接着しやすくするためです。
 

歯の神経を取る治療を回避できた (7)
次亜塩素酸ナトリウムという消毒剤で、露髄面とその付近を消毒します。これがADゲルと言われる薬剤です。
 

歯の神経を取る治療を回避できた (8)
良く乾かすと、この様になっています。
神経が露出した面からは、出血もありません。
非常にきれいな状態です。
 

歯の神経を取る治療を回避できた (9)
接着材を塗ります。
 

歯の神経を取る治療を回避できた (10)
ボンディング剤を塗ります。
 

歯の神経を取る治療を回避できた (11)
光で固めます。歯科用のコンポジットレジンは、青色光で固まるようになっています。最近では、かなり強力な光が照射できる機械(光重合器)がありますが、同時に熱もかなり発生します。歯の神経が、やけどしない様に気をつけます。
 

歯の神経を取る治療を回避できた (12)
露髄面付近を触診します。ボンディング剤というレジンが固まっており、露髄面には近づけません。歯の質に強力に接着していますから、バイ菌も浸み込んだりできません。
 

歯の神経を取る治療を回避できた (13)
コンポジットレジンで表面を覆い、補強しておきます。
 

歯の神経を取る治療を回避できた (14)
数日後です。何の症状もありません。よかったですね!
 

まとめ

この様な偶発的な出来事で、この歯の神経を取るという、最悪な事態を避ける事が出来ました。ほっと一安心です。お隣の県から、遠い所、わざわざお越しいただいた甲斐がありました。
なぜ、歯の神経を取るのが好ましくないかと言いますと、歯の神経を取ると、割れたりひびが入ったりというトラブルが増え、割れて使えない場合には抜歯になってしまいます。
最近では、割れた歯も、接着して元の所に植えておけば、使える事が多いのですが、どれだけ長持ちするかは?です。(7年程度は十分使えるという情報もあります。)
歯の神経があれば、このような無用なトラブルを回避でき、虫歯を防ぐことができれば、かなりの長期間、歯を持たせることができるのです。ですから、当院では、歯の神経をできるだけ取らないで済むよう、色んな治療を用意しています。
 
今回の方法、ADゲル法は、歯科では不可欠な接着という技術レベルを、飛躍的に高めてくれた、素晴らしい技術だと思います。
ADゲル法の場合、接着材は、クラレのライナーボンドⅡΣという製品を使うそうです。これは、次亜塩素酸を強力に使用した後にも使える、還元作用を持つボンディング剤という事です。
クラレは、日本の会社です。日本の国際競争力が低下する中、この様な特別な用途を持つ製品が、日本製というのは良かったと思っています。


この例の
年代・性別 20代女性
治療法   覆髄 コンポジットレジン充填
デメリット 歯の削除
治療時間  2時間
費用    60,500

覆髄の 詳細 デメリット など

一覧へ戻る

この記事を書いた人

Recommend
おすすめの記事