簡単な例として、生理食塩液の浸透圧を計算しましょう。
生理食塩液は、0.9%NaClです。
% 質量パーセント濃度
0.9%は、100mlに0.9gの食塩を含む、1Lに9gという事です。
分子量
12C原子の質量を12とした相対質量で表します。
原子量 Na 23.0、 Cl 35.5
組成式NaClの式量は 58.5
NaClは、イオンでできた物質なので、分子量という代わりに式量を呼ぶそうです。
g/mol モル質量
物質 1 mol あたりの質量はモル質量です。
NaClのモル質量 58.5g/mol
1molとは、高校で習いましたよね。原子が6.02×10の23乗個あるという事です。
mol/L 濃度
1L中のモル数です。
0.9%生理食塩液は、0.154mol/L 154mmol/Lとなります。
mEq/L ミリ当量(ミリイクイバレント 略してメック)
電解質の濃度を表します。溶液1Lに溶けている溶質の等量数。
mEq/L = 溶質の量(mg/l)/分子量(g)*原子価
mEqはEqの1/1000の単位。
Eqは、英語のequivalent to ~と等しいという単語の略です。
0.9%生理食塩液中のNaは 154mEq/L
Clも 154mEq/Lとなります。
この式を変形すると、溶質の量は
Mg/l = {mEq/L*分子量(g)}/原子価
で出せます。
輸液では、電解質の陽イオンと陰イオンの等量は同じです。
それを、分かりやすく表現できる単位です。
mOsm/L 浸透圧(ミリオスモル)
mOsm/Lは浸透圧を表す単位です。溶液1L中の溶質の粒子数です。
各イオンのモル数の総和となります。
308mOsm/Lとなります。
これは、血液と同じ浸透圧なのか?
血漿浸透圧 285 ± 5 mOsm/kgH2O
血漿浸透圧は電解質などで維持されているとの事です。
1 mosm/kg・H2O=水1 kgに溶けている溶質のM数
おかしい!
先程の生理食塩液の浸透圧308mOsm/Lと違うではないか?という事になります。
ここで、イオンが電離する割合を考慮しないといけません。
NaClは水溶液中で、Na 、Cl-として存在するのですが、
すべてがイオンとして存在するわけではない。
NaClも一定割合あるという事なのです。
電離
NaClの解離係数は、約85%
15%のNaClが電離しないで存在するとして計算すると、
約285mOsm/L
血漿浸透圧とほぼ等しくなります。
成功!
生理食塩液の浸透圧は、血漿浸透圧と等しいと、無事、計算することができました。
最低限、こういう計算ができる事は必要です。
これができれば、色んな薬を配合した際の浸透圧を計算して、確かめる事ができます。
また、量にも気を付けないといけません。
生理食塩液を、大量に急速投与すると、血清電解質異常、うっ血性心不全、浮腫、アシドーシスを起こすことがあるそうです。
生理食塩水は、血漿よりNa,Cl濃度が高いからです。
血漿よりpHが低い。
大量輸液で高クロール性アシドーシスになる。という特徴があります。
そうすると、
生理食塩液は、本当に生理的なのか?という疑問があります。
もっと生理的な輸液が様々に工夫されています。
代謝によって生じる酸を中和する乳酸リンゲル、酢酸リンゲル、
血管内に分布するアルブミンとか、細胞内液まで分布する5%ブドウ糖溶液など。
実際は、等張液、低張液、高張液が、それぞれの目的に応じて使い分けられています。