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安全な点滴のために

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  • 浸透圧(mOsm/L)について

浸透圧 osmotic pressure

浸透圧の計算は、点滴を準備する際に必要です。
あまり濃い溶液を入れてもいけないし、薄すぎる溶液を入れてもいけません。
体にやさしい溶液である必要があります。
浸透圧がおかしいと、血管内で血栓ができやすくなったり、赤血球が溶血したりするからです。
通常は、そんなことが起こらない様に処方が考えられていますから、ご心配なく。

とは言っても、
点滴を処方通りにミキシングするのでなく、
自分で浸透圧が適正か、計算し確かめたいものです。

  • 01
  • 生理食塩液の浸透圧

簡単な例として、生理食塩液の浸透圧を計算しましょう。
生理食塩液は、0.9%NaClです。

簡単な例として、生理食塩液の浸透圧を計算しましょう。
生理食塩液は、0.9%NaClです。

% 質量パーセント濃度

0.9%は、100mlに0.9gの食塩を含む、1Lに9gという事です。

分子量

12C原子の質量を12とした相対質量で表します。
原子量 Na 23.0、 Cl 35.5 
組成式NaClの式量は 58.5
NaClは、イオンでできた物質なので、分子量という代わりに式量を呼ぶそうです。

g/mol モル質量

物質 1 mol あたりの質量はモル質量です。
NaClのモル質量 58.5g/mol
1molとは、高校で習いましたよね。原子が6.02×10の23乗個あるという事です。

mol/L 濃度

1L中のモル数です。
0.9%生理食塩液は、0.154mol/L 154mmol/Lとなります。

mEq/L ミリ当量(ミリイクイバレント 略してメック)

電解質の濃度を表します。溶液1Lに溶けている溶質の等量数。
mEq/L = 溶質の量(mg/l)/分子量(g)*原子価
mEqはEqの1/1000の単位。
Eqは、英語のequivalent to ~と等しいという単語の略です。
0.9%生理食塩液中のNaは 154mEq/L 
Clも 154mEq/Lとなります。

この式を変形すると、溶質の量は
Mg/l = {mEq/L*分子量(g)}/原子価
で出せます。

輸液では、電解質の陽イオンと陰イオンの等量は同じです。
それを、分かりやすく表現できる単位です。

mOsm/L 浸透圧(ミリオスモル)

mOsm/Lは浸透圧を表す単位です。溶液1L中の溶質の粒子数です。
各イオンのモル数の総和となります。
308mOsm/Lとなります。

これは、血液と同じ浸透圧なのか?

血漿浸透圧 285 ± 5 mOsm/kgH2O

血漿浸透圧は電解質などで維持されているとの事です。
1 mosm/kg・H2O=水1 kgに溶けている溶質のM数

おかしい!
先程の生理食塩液の浸透圧308mOsm/Lと違うではないか?という事になります。

ここで、イオンが電離する割合を考慮しないといけません。
NaClは水溶液中で、Na 、Cl-として存在するのですが、
すべてがイオンとして存在するわけではない。
NaClも一定割合あるという事なのです。

電離

NaClの解離係数は、約85%
15%のNaClが電離しないで存在するとして計算すると、
約285mOsm/L
血漿浸透圧とほぼ等しくなります。

成功!
生理食塩液の浸透圧は、血漿浸透圧と等しいと、無事、計算することができました。

最低限、こういう計算ができる事は必要です。
これができれば、色んな薬を配合した際の浸透圧を計算して、確かめる事ができます。

また、量にも気を付けないといけません。
生理食塩液を、大量に急速投与すると、血清電解質異常、うっ血性心不全、浮腫、アシドーシスを起こすことがあるそうです。
生理食塩水は、血漿よりNa,Cl濃度が高いからです。
血漿よりpHが低い。
大量輸液で高クロール性アシドーシスになる。という特徴があります。

そうすると、
生理食塩液は、本当に生理的なのか?という疑問があります。

もっと生理的な輸液が様々に工夫されています。
代謝によって生じる酸を中和する乳酸リンゲル、酢酸リンゲル、
血管内に分布するアルブミンとか、細胞内液まで分布する5%ブドウ糖溶液など。
実際は、等張液、低張液、高張液が、それぞれの目的に応じて使い分けられています。

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  • 02
  • 体の水分はどの位か?その分布は?

体重の60%が水分。
そのうち、2/3が細胞内液、1/3が細胞外液。
細胞外液の3/4が間質、1/4が血管内に分布しているそうです。

全水分のうち血管内にあるのは、
1/3*1/4=1/12になります。

全体重のうち、血管内の水分は、
6/10*1/3*1/4=1/20
で、
全体重の5%という事になります。
50kgの人だと、2.5kg(血液1Lは約1kg)
案外少ないものです。

健常男性は、6割が水分。
健常女性は、55%。
高齢者は、50%。

肥満の人は、水分の割合が少なく、
やせ型の人は、水分の割合が多い。
子供も多い。

循環血液量は?
また、循環血液量は、体重の1/13と言われていて、
体重50kgの時、3.85kg。

血管内水分2.5kg、循環血液量3.85kg。
? この違いはなに?という事になります。

血球成分を加味してないからです。
Ht(ヘマトクリット値:血中に占める血球の体積)を35%とすると、
血球成分は
50/13*0.35=1.35
または
2.5*0.35/(1-0.35)=1.35

血管内水分2.5 血球1.35=循環血液量3.85
と、一致することになりました!

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  • 03
  • 輸液の組成と分布

では、輸液した成分は、どこに行くのでしょう。

細胞内外に生じる浸透圧差
まず、血清浸透圧から

血清浸透圧(mOsm/kg)
=2*Na(mEq/L) Glu(mg/dl)/18 BUN(mg/dl)/2.8

と表せるそうです。

血清浸透圧の近似

また、血清浸透圧は、ほとんどがNaによっていて、GluやBUNの影響は少ない。
それで、
血清浸透圧(mOsm/kg)=2*Na(mEq/L)と近似もできる。
Na*2とするのは、
Naと同量のマイナスイオンが存在するから。

ですが、細胞内外の水分の移動に関連するものは、NaとGlu(グルコース)で、
BUN(尿素窒素)は、細胞膜を自由に移動できるので、浸透圧には関係しない。

という事で、
有効浸透圧(mOsm/kg)
=2*Na(mEq/L) Glu(mg/dl)/18
これは、細胞内外の水の移動に直接関係する 有効浸透圧(張度)です。

血管内外に生じる浸透圧差
膠質浸透圧
アルブミンなどの血漿タンパクは、血管外に出ることはないため、
血管外から、血管内へ水分を引っ張り込む要因になる。

また、
アルブミンは、負に帯電していて、陽イオンのNaを血管内に引き寄せる。
この事でも、浸透圧差が生まれる。

輸液の組成

- Na(mEq/L) K(mEq/L) Ca(mEq/L) Cl(mEq/L) ブドウ糖(%)
生理食塩水 154 - - - -
リンゲル 154 4 4.5 155.5 -
1号液 90 - - 70 2.6
3号液 35 20 - 35 4.3
5%ブドウ糖 - - - - 5

この様に、輸液の組成は、上から順に、NaClが薄くなり、ブドウ糖の割合が増えていくと理解すると分かりやすくなります。

いよいよ 輸液はどこに分布するのか?

生理食塩水を1L輸液した場合、
すべて細胞外液になります。
Na154mEq/Lが入っているためです。
細胞外液の割合(間質3、血管内1)の通りに分布し、
細胞内0ml間質750ml血管内250ml
となります。
生理食塩水1Lを輸液した場合、血管内に分布するのは、25%の250ml分布してくれる。

5%ブドウ糖1Lを輸液した場合、
ブドウ糖は消費され、水が残る。
これは自由水と考え、すべての場所にその割合で分布する。
細胞内667ml間質250ml血管内83ml
となります。
つまり、1L輸液しても、血管内に分布するのは約8%。

循環血液量を増すためには、生理食塩水を使うという事になります。
心不全が心配な場合は、5%ブドウ糖。

1号液と3号液は、生理食塩水と5%ブドウ糖の中間という事です。

また、5%アルブミンは、すべて血管内に分布します。

さらに25%アルブミンは、血管内に間質液を引き寄せます。

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  • 04
  • 添加物について

次に、添加物
ピロ亜硫酸ナトリウム(酸化防止剤)Sodium pyrosulfite
pH調整材
などが、よく見られます。

この添加物は、どの位までなら大丈夫なのか?という事です。
ゼロなら理想でしょうが、薬剤が変質してしまってはいけません。

日本医薬品添加剤協会によれば、

http://www.jpec.gr.jp/detail=normal&date=safetydata/ha/dahi11.html

ピロ亜硫酸ナトリウムの場合、
最大使用量は、
経口投与 20mg、静脈内注射 40mg、筋肉内注射 40mg、皮下注射 40mg、皮内注射40mg 、歯科注射 25μg、局所麻酔注射 50mg、
となっています。

ビタミンC注フソー2gは、

https://www.fuso-pharm.co.jp/cnt/seihin/product/document/123/TB_20170519163154_123.pdf

10ml中にアスコルビン酸(ビタミンC)2000mgを含む無色澄明の水性注射液。
添加物として
ピロ亜硫酸ナトリウムは10mg。

ビタミンC注フソー2gは、4本までにしたいという事になります。

以上の様に、
当院では、こんな事を考慮して、薬を選び、点滴の準備をして、
安全な点滴療法ができるよう努力しています。

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  • 05
  • アボガドロ定数について

molと言えば、アボガドロ

1811年イタリヤのアボガドロ先生が、「ある一定の体積の気体の中の原子数は一定」と仮説を立てた。
僕は、ここに昔から興味がありました。
不思議でしょうがなかったからです。
同じ体積なら、小さい原子ならたくさん入る。大きい原子なら、あまり入らない。
普通、そう考えません?
時々、本屋さんで本を見てみるのですが、アボガドロ先生が何をどう考えたかを詳説してあるものは見つけられませんでした。

1802年ゲイ=リュサックの気体反応の法則
ある反応に2種以上の気体が関与する場合、反応で消費あるいは生成した各気体の体積には同じ圧力、同じ温度のもとで簡単な整数比が成り立つ
しかし、
1808年ドルトンの原子説との間に、分子という概念がなかったために整合性が取れず、
アボガドロ先生のアボガドロの法則(分子説)へと発展していく。

The first hypothesis to present itself in this connection, and apparently even the only admissible one, is the supposition that the number of integral molecules in any gases [sic] is always the same for equal volumes, or always proportional to the volumes. Indeed, if we were to suppose that the number of molecules contained in a given volume were different for different gases, it would scarcely be possible to conceive that the law regulating the distance of molecules could give in all cases relations as simple as those which the facts just detailed compel us to acknowledge between the volume and the number of molecules.

ある体積に含まれる分子の数が異なるガスで異なると仮定すると、分子の距離を規制する法則がすべての場合に単純な関係と同じくらい簡単な関係を与えるとは考えられない
出典http://web.lemoyne.edu/~giunta/avogadro.html

そして、アインシュタインのブラウン運動の論文により、原子・分子の存在が確認され、原子・分子を否定する研究者はなくなったという流れだそうです。

ところで、

化学で常に使うmolは、
アボガドロ先生の文章中にあるmoleculeではなく、
ヴィルヘルム・オストヴァルトというドイツの科学者が1900年頃にお使いになったそうです。
kgなどと違う、新しい尺度の単位が生まれたわけです。

アボガドロ定数 NA= 6.022 140785×10の23乗mol-1
炭素12C原子の質量を12とした時、12gの炭素に含まれる原子の数。
分子量、原子量に相当するg数(1mol)に含まれる、原子や分子の数が、6.022 140785×10の23乗個であるという事です。
ホントかなと思うかもしれませんが、本当だそうです。
最初は、定義から始まり、推定、実測と進化してきたそうです。

歴史的には、

1811年、「一定温度、一定圧力、一定体積の気体には、物質の種類によらず、ほぼ同数の原子や分子が含まれる」と、
イタリア・トリノ大学の有名なアボガドロ先生が提唱されたそうです。
しかし、当時は確かめようがなかった。

この時、日本では、
江戸時代末期。
ゴローウニン事件が発生。ロシアの軍艦艦長( ゴローウニン )を国後島で逮捕。
1811年、ディアナ号の艦長ゴローニン海軍大佐は千島列島の測量の任務を帯び、国後島に上陸、補給を求めた際、逮捕されたものです。
背景は、ロシアは通商を求めて何度か日本にアプローチしましたが、断られており、
ニコライ・レザノフも長崎で断られ、その後、2年に渡り、択捉島や樺太・利尻島を襲撃していたのです。
そこで幕府は、ロシア船内払令を出し、緊張がただよっていた。
そんな時代です。

中国では、
清。
この頃のイギリスは、対中国貿易で莫大な貿易赤字を出していて、また、アメリカ独立戦争の戦費調達などのため、インドで栽培したアヘンを中国で売り、莫大な利益を得ていた。
清はアヘンを禁止した。
これから、イギリスとのアヘン戦争、香港の割譲などになっていく。
今もある、有名なHSBC香港上海銀行は、香港の銀行ではなく、
イギリスがアヘン貿易で得た利益を母国に送金するための銀行でした。

戻ります。

1865年、ウイーン大学のロシュミット先生が、単位体積当たりの分子数を推定した。
当時は、気体の平均自由行程値が報告されている時代で、
それを基に、アボガドロ定数 NAは,NA = = 4.0×10の22乗mol–1と導き出せるそうです。
が、現在使われているアボガドロ定数とは、一桁違っていました。

この頃、
日本では、幕末で、1864年第1次長州征伐、1866年坂本龍馬、薩長同盟。

中国では、1864年、太平天国滅亡。

その後、ブラウン運動や、電荷の測定などから、
ほぼ現在のアボガドロ定数に近い値となった。

現在もっとも純粋な結晶が得られるのは、シリコンの結晶。
ダイヤモンドと同じ立方晶系の結晶で、シリコン球で密度pを、X線干渉計で格子定数aを、同位体の存在比を質量分析計で測定し、モル質量Mとすると、
アボガドロ定数NA=8M/(pa3)となる。

その後、NA = 6.062(12)×10の23乗mol–1 と進化。

なんと、2003年独立行政法人 産業技術総合研究所が、EUの共同研究センター標準物質計測研究所との協力で、アボガドロ定数の高精度化に成功したそうです。

これで、アボガドロ定数を直接的に測定する方法としては、最高精度である2×10-7を達成。

このデータは、科学技術データ委員会CODATAで評価され、これにもとづいて約200の基礎物理定数が全面改訂されたそうです。

日本で測定した基礎物理定数がCODATAで採用されるのは初めてだったそうです。

真球度数十ナノメートルで、超精密研磨された質量1キログラムのシリコン球が用意され、その密度を8桁という極めて高い精度で測定することで、可能になったそうです。

最も新しい推奨値は
CODATAによる2017年特別調整結果として、
アボガドロ定数6.022 140 758×10の23乗mol−1

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